(土) 20:24 図書館列車書庫
グラン・トリノ、チョコレート・ファイター、レスラー。
上半期に見た映画は怒濤の名作・傑作揃いだった。
下半期冒頭、早速二本の「見て良かった」映画に出会えた。
どちらも想田監督のドキュメンタリー映画だ。
まずは「精神」。ちょうど一週前に見た。

精神<監督・撮影・録音・編集・制作:想田和弘>【図書館列車書庫入り!】
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去年「いのちの食べかた」を見た七藝で。七藝はドキュメンタリー強いね。(→上映予定
おじさんおばさんが多いかな。男性は大体若い。
トークショーの回だったから余計多いかも。
整理券出て補助席も出してた。
映画『精神』

包丁で料理するシーンなど、素晴らしいカットがたくさんあった。
包丁の危なっかしい扱い一つで、この人らの社会での生きづらさ、不器用さが端的に表現されている。

前半にある長回し、身の上話。一言も聞き漏らせ無い激動の人生。
他にももっとこの人たちを見ていたいと思える内容。
もう充分、映画としての要件を満たしている。

一番好きなシーンは施設内の喫茶店で、
各人バラバラのミニテーブルだけど、みんなで同じ釜の飯を食っているところ。
治す側とか治される側とか、まぜこぜになってしまっているのが、いい。


映画の内容としては上の白いポスターががっつり合ってるんだけど、
下の「見せ物小屋的な」旧版ポスターデザインも捨てがたい。
んでも紹介は上のにしといた方がいいでしょうね。
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公式サイトのコラムも素晴らしい。

日本の精神障害者を取り巻く状況

阿部光希(山陽新聞社編集局社会部記者)
2001年、大阪教育大付属池田小学校で起きた校内児童殺傷事件では犯人の精神科通院歴や精神障害者の再犯が増えているという趣旨の小泉純一郎首相(当時)の発言が大きく報道された。だが、統計的には精神障害者が刑法犯となる率は一般のそれより低い。この事件でも犯人が病気を装っていたことが後に判明するが、「精神障害者は何をするか分からない」という偏見を拡大した。精神障害者の地域生活をテーマにした連載を執筆するために岡山県内の病院や社会復帰施設を取材した際、アパートを借りるのに苦労したり、近所の目があって自分の家に戻れないという当事者の姿をいくたびも見た。


罪や問題を犯した人があるカテゴリに所属してたからってカテゴリの責任にすり替えるのは、
「血液型B型はうんたらかんたら」
「黒人は、韓国人はうんたらかんたら」
「ゲーム脳はうんたらかんたら」
「性表現は、ロリペドはうんたらかんたら」
「スイーツ女はうんたらかんたら」
みたいな頭の悪い偏見なんだよね、実は。

自分の利益しか考えず「性表現規制は反対だけどスイーツや韓国は叩く」みたいな奴は、
アグネスチャンを笑えない。


上映後は、想田監督の端的で分かりやすく面白いトークショー。聡明な人だ。

「精神」 想田和弘監督に聞く・映画の森
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統合失調症の方や通院歴のある方々も質問していたけど、
ポイントを押さえて的確な質問をされていた。
ホント映画の感想と同じように、どこが異常なんだ、正常じゃんとしか思えなかった。

それなら余程、朝の新聞を読んで足を運んだという健常者のおっさんのほうが
エラい人の朝礼演説みたいな、ダラダラと長く要点がない、
質問とも感想とも取れない話をしていた。

トークショーにはテレビ取材が入っていた。
タブーだろうが何だろうがガンガン特攻する番組、MBS・VOICEのキャメラだった。いつ放映かな?


自分の小学生時代。両親は共働きで、
子供を預ける行政サービスによく預けられていた。
放課後の学校、一つの空き教室に集められたのは自分のような子供と、
養護学級と呼ばれた特別な教育を受ける障害者の子らだった。

発達障害という重度障害者の「たけちゃん」は、いきなり叫んだり、走り出したりする。
それでも、人をけなす事で自分の弱さを隠すような中二病になる以前の
子供だった僕らは、とてもフラットな視点で一緒に遊んだ。

「おもろい奴」という「立場」「キャラ」のやんわりと優しい受け入れ方で、
ちゃんと彼の「居場所」があった。
おもろい奴、と言っても笑いものにするわけではなく、
ジミー大西を見て「可哀想」「笑ってはいけない」などと思わないように。


今日復活上映の「選挙」も大変良かった。
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非常にフラットな視点で、淡々と観察するスタイルに好感が持てた。

この映画を見て、特定の政党を応援したり批判したりしている、
なんて感想を持つ人は居ないのではないだろうか。

むしろ「俺ら有権者って、なんて何も考えてない馬鹿なんだろう」と
自省する事しきりかも知れない。
「小泉さん格好いいから」と自民党に票を入れたり、
「マスコミが政権交代って言ってるから」と民主党に票を入れたり、
「宗教上の理由で」と公明党に票を入れたり、
「蟹工船が流行ってるから」と日本共産党に票を入れたり、
その他諸々。

実は「精神」の中で特定の政党のポスターが画面右半分大写しになるカットがあるんだけど、前作が「選挙」である想田監督の「精神」の中で映っているという事が重要だ。
特定の政党を応援していると言うつまらないプロパガンダではなく、
「精神」と「選挙」は有機的に繋がり、連続した作品であり、
「選挙や政治は生活のすぐ隣にあるんですよ」
「他人事ではありませんよ」
という事を、自分は読み取った。